【ライフ】郵便料値上げに関する資料と動向(個人的覚え)


昨年10月に正式発表されましたが、2014年4月から郵便料金が値上げになります。基本料金の値上げは実に20年ぶりのことだそうです。

【ニュースソース】

先行記事
・郵便料金20年ぶり値上げへ 手紙82円・はがき51円 (日本経済新聞)
上の記事のように2013年9月時点ではハガキが51円と報じられたようですが、同年10月の正式発表では52円とされました。

正式発表
・日本郵政、郵便料金の値上げ正式発表 2円切手も発行再(SankeiBiz)
・2014年4月1日(火)から郵便料金が変わります。(日本郵便


今回は戦後の新郵便法施行後から現在までどの程度の料金変動があったのかを個人的な興味から調べて資料にまとめてみました。雑感も含めて以下に記しています(あくまで主観的な話です)。


■ 郵便物の種別

まず郵便の種別がどんな分類になっているのかから見てみます。
国内郵便の種別は以下のとおりです。

・第一種郵便物(封書)
 定形郵便物
 定形外郵便物
 郵便書簡(ミニレター)
 特定封筒(レターパックライト・レターパックプラス)

・第二種郵便物(はがき)
 通常はがき
 往復はがき

・第三種郵便物(定期刊行物)

・第四種郵便物
 通信教育用郵便物
 点字郵便物、特定録音物等郵便物
 植物種子等郵便物
 学術刊行物郵便物

■ 郵便料金の変遷

前項のように郵便料金には第一種〜第四種という4つのククリがありますが、一般利用者にとって日常馴染み深いのは一種(封書)と二種(ハガキ)ですよね。

ちなみに現行料金表(2014.01現在)はこちら。→国内料金表

では戦後の料金変遷(つまり値上げの歴史ですが)をざっと眺めてみます。

関連事項
第1種(封書)
前比
第2種(葉書)
前比
1946(昭21)

30銭
15銭
-
7月25日
1947(昭22)
1円20銭
4.00倍
50銭
3.33倍
4月1日
1948(昭23)
新郵便法施行
1.00倍
1.00倍
1月1日
1948(昭23)
5円
4.17倍
2円
4.00倍
7月10日
1949(昭24)
8円
1.60倍
2円
1.00倍
5月1日
1951(昭26)
10円
1.25倍
5円
2.50倍
11月1日
1966(昭41)
郵便法改正
定形25g以内
前比
定形50g以内
前比
前比
7月1日
15円
1.50倍
20円
2.00倍
7円
1.40倍
1972(昭47)
20円
1.33倍
25円
1.25倍
10円
1.43倍
2月1日
1976(昭51)
50円
2.50倍
60円
2.40倍
20円
2.00倍
1月25日
1981(昭56)
60円
1.20倍
70円
1.17倍
30円
1.50倍
1月20日
1981(昭56)
1.00倍
1.00倍
40円
1.33倍
4月1日
1989(平01)
消費税導入(3%)
62円
1.03倍
72円
1.03倍
41円
1.02倍
4月1日
1994(平06)
事業収支悪化
80円
1.29倍
90円
1.25倍
50円
1.22倍
1月24日
1997(平09)
消費税増税(5%)
1.00倍
1.00倍
1.00倍
4月1日
2001(平13)
郵政事業庁発足
1.00倍
1.00倍
1.00倍
1月6日
2003(平15)
日本郵政公社発足
1.00倍
1.00倍
1.00倍
4月1日
2007(平19)
日本郵政グループ発足
1.00倍
1.00倍
1.00倍
10月1日
2012(平24)
日本郵便株式会社発足
1.00倍
1.00倍
1.00倍
10月1日
2014(平26)
消費税増税(8%)
新 料 金 
4月1日
82円
1.02倍
92円
1.02倍
52円
1.04倍
※筆者調べ

戦後すぐは旧制度の料金体系と貨幣価値に基づいて運用されていますが、1948(昭和23)年の新郵便法の施行後すぐの値段の上げ幅は4倍超と大きな変化が見られます(戦前、戦中〜終戦直後もインフレによりかなりの値上げがありました)。

1951(昭和26)年の値上げから1966(昭和41)年までの15年は安定も進み、大きな動きがなかったようですが、以降、1994(平成6)年の最終値上げまでの28年間は、およそ5年程度の間隔で小刻みに値上げが行われているのがわかります。

戦後最後(現時点)の値上げの1994(平成6)年は「値上げ理由」が消費増税ではなく「郵便事業の収支悪化」とされています。つまり赤字補填という理屈です。これまでの値上げもつまるところは税収との兼ね合いの中でそうした理由付けがされてきたものと考えられます。

だいたい郵便事業は採算性の低い事業で、普通にやってても儲からないから定期的に郵便料金を値上げするしかないってのがお家事情であり、他方職員12万人を抱えるだけに、公務員改革の槍玉に挙げられたのは記憶にあたらしいところです。公務員における組織別職員数は、自衛官を抱える防衛省が約25万人のダントツトップで、次に消防警察等を含む東京都職員が17万人、郵政関連はそれにつぐ大所帯です。

横道にそれました。話を「郵便料金値上げ」に戻します。

消費税3%が導入された1989(平成元)年には1円単位の値上げがあり、1997(平成9)年の5%増税の時にはありませんでした。その少し前の1994(平成6)年に「収支悪化」を理由に大幅値上げを断行しているのですから、このあたりの動向がややクセがあるというか、まぁ政治的な空気感がありますよね。赤字の穴埋めをしつつも「儲け」という概念の持ち込みようのない「公共事業」では、単純な「消費増税による値上げ」を(したいけれど)しにくい気分があったということでしょう。

しかし事情は2000年代の「郵政民営化」により大きく変わってきます。表にも示したとおり、紆余曲折を経てそれまで国営だった郵政事業は2007(平成19)年に「日本郵政グループ」として民営化されました。郵便事業をめぐる一連の制度や組織形態の変革は、他の運送事業者との競合状況を作りだすことになり、それまでの公共的事業も(理屈の上では)競争原理にさらされることになったわけです。

そんな民営化によって何が変わったのかといえば、政治や経営側の事情の変化であって、一般の郵便サービスの利用者はこの一連の変動を骨身にしみて体感したという感じではなかったのではないでしょうか。「あ、看板オレンジに変わった」くらいの気分でおおかたの人は見ていたように思います(私はそうでした)。

それにハガキや切手の(デザインは変わったけれど)値段が変わったわけではないので、特に過不足なく普通にサービス利用はできていました(良くも悪くも「窓口サービスの質」に変化が見られなかったのには色々と思うところはありますけど)。

■ 平成26年4月の値上げ

今回2014(平成26)年4月の20年ぶりに予定される値上げについてですが、消費税が8%に増税されることに合わせてとはいえ、メインの封書及びハガキは、ともに2円の値上げ幅に留められています。しかし上表では省いていますが、定形外郵便の50gより上の従量料金の値上げ幅で全体のバランスを取る(50g以内と100g以内は値段据え置き、それ以上はすべて値上げ。下表参照。)という「調整」がなされており、 「増税負担」の「緩衝材(クッション)効果」を狙うという印象を受けます。実際正式発表でもその主旨の説明がされていました。

つまりこれは1989(平成元)年の消費税導入時の値上げ(60円→62円、葉書40円→41円)と、1994(平成6)年の値上げ(封書62円→80円、葉書41円→50円)の関係と同じ「段階的値上げ」がなされるという含みがあるものと予測されます。

 
※日本郵便(株)の正式発表資料より画像転載

■変更前の料金
定形郵便物
25g以内
80
50g以内
90
定形外郵便物
50g以内
120
100g以内
140
150g以内
200
250g以内
240
500g以内
390
1kg以内
580
2kg以内
850
4kg以内
1,150
ミニレター
(郵便書簡)
25g以内)
60
レターパックライト
(交付記録郵便としない特定封筒郵便物)
厚さは3㎝以内とします。
4kg以内
350
レターパックプラス
(交付記録郵便と特定封筒郵便物)
交付記録郵便のオプションサービス料金は、レターパックプラスの料金に含まれています。
4kg以内
500
※公式サイトよりデータそのまま転載(平成26年2月現在)

来(きた)る消費増税10%のときにさらに大きく値上げされるのを覚悟してくださいね、というメッセージでもあるのでしょうかね。もしくはそれより先に(過去消費税が5%になるより先にそうしたように)値上げするための布石ということなのかもしれません。過去の経験則に則ればそういうことなんでしょう。

まぁ愚にもつかぬことを縷々と述べてきましたが、いずれにしても一般消費者にとって家計に厳しい時代がますます進行してくるのは否めませんね。郵政事業の変遷等々についてを別段詳細に調べているわけではないですが(むしろ門外漢)、やはりこうして概観してみると陰鬱な気分になります。

それでも「切手コレクター」にとっては2円切手(再び「紺色の下地に秋田犬」のデザインになるのかな?)の復活や新価格帯の新切手の登場はむしろ喜ぶべきトピックなのかもしれませんけどね。色々とフクザツです。

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追記→2円切手は「秋田犬」ではなく「うさぎ」になるようです。
新料額の普通切手及び郵便葉書等の発行日のお知らせ